ツリーとハープ

ハープからツリーへのお手紙。いつか届くかな。

4通目。君も食べる?

ツリー、面白いものを持ってきたよ!


じゃん!明治チョコレートツインクル〜

写真撮るの忘れちゃった♡


食べたことあるかい?

こういう、懐かしくてきらきらしたものが好きなんだ。駄菓子屋さんなんかへ行くと、テンションが上がってしまう。

セボンスターなんかもいいよね。ときめくっていうか。

まあ、いつか君には本物のアクセサリーをプレゼントするよ。

 


これはね、チョコレートの中に金平糖とか、さらに小さなお菓子が詰まっているんだよ。

素敵でしょう?

チョコレートを噛んで割ってもいいし、口の中で溶かしてもいい。

中に何が入っているか、サプライズみたいで楽しいだろう?

 


一緒に食べよう。

君が3つ食べな。僕は2つで十分。

君の幸せそうな顔を見たら満たされるんだ。

とてもかわいいよ。

 


ああ、ほんとうに好きだな。

僕は幸せ者だ。

いつか、君は僕以外の人と結婚するだろう。

その時は、ぜひ僕に祝わせてくれないか。

僕は君の幸せを願っている。

だからこそ、君を自由にしたいんだ。

 


でもひとつだけお願いだ。

その時がきたら。

この気持ちを決して外に出さないから、君を好きなままでいさせてほしい。

 


君との将来を考えるとね、楽しくなるし、嬉しくなるし、悲しくなるし、つらくなる。

 


例えばさ。

僕達同性でしょう。

子供も産めない。形として、僕らに何が残せるんだろうか。

それに、日本での女性の地位はまだ低い。

性別役割意識が深く根付いているからね。

君はやっぱり、僕の腕の中では心もとないと思うのかな。男性なら安心…?

 


でもね、やっぱり君との未来を想像するのは楽しいよ。

僕達だけでしか行けないところがきっとある。

きっとね。

僕は口下手だから、こんなこと、面と向かっては言葉が紡げないだろう。

だからこうして手紙を書くわけだけど、いつ届くのか。ついぞ届かないのか。なんだかドキドキするし、その答えが運命なんじゃないかって思うんだ。

この声が届くまでは、君と僕は友達のままさ。

今更、僕がもっと話し上手だったらって、思うよ。

 


4通目のお手紙。

チョコレートはいつでも味方。ハープ

3通目。楽しいね。

 

ツリー!!

 

 

君のことを考えていたら、楽しくて楽しくて眠れなかった。

たくさん話したいことがあるんだなって、それだけ好きなんだなって自覚したよ。

 


君のことを考えながらね、夜が明けていくのを見るのは、なんというか、切ないんだけど美しいんだよ。この世界に2人だけになったみたいだ。

 


僕の家のすぐ先に、街灯があるんだ。僕の部屋から見えるんだけどね。夜、窓辺に座って外を見るとね。そこだけ切り取ったように明るくて。でも、明るいというより冷たく輝く感じなんだ。

 


街灯は、ツリー、君とは違った光を持っているよ。君は、底抜けの笑顔がチャームポイントだね。決してギラギラした感じではないんだけど、どうしてか明るいんだ…。

周囲も照らし出す明るさ。というより、あたたかさに近いかな?

 


こう言ったら君は謙遜するだろうけど、持ち前の笑顔と、明白さと、聡明さで、とっても君は好かれているんだ。

友達も多いね。

僕は君が唯一の親友だと思っているけれど、君にとって僕は、その他大勢のうちの1人に過ぎないのかも。

少し不安になってしまうよ。僕ばかり、大きな気持ちを押し付けていたら、ごめんね。

 


そうだ、今朝は緑茶を飲もうかな。

なんだか落ち着くんだ。君もどうだい?

そういえば、僕は君の好物をほとんど知らない。

今まで何度も、好きな漫画や本の話で盛り上がったけれど、あまりにも基本的な事は、意外と知らないものなんだな。

灯台下暗しっていうだろう?

多分だけど、きっとそれさ。

今度また教えておくれ。

じゃあ。

 

 

これで3通目のお手紙だ。ラッキー3だね。ツリーの名前の発音と似ているから。

ハープ

2通目。君が読んでくれると思うと嬉しい。

 

いつも楽しませてくれるツリー

 

 

元気かい?

そうか。それを聞いて安心したよ。

 


今日は美しい景色について話そう。

僕は、いつかひまわり畑に行きたいんだ。

鮮やかな夕焼け。広大な土地で、まっしぐらに伸びているひまわり。

素敵だと思わないかい?

そこに君がいたらもっと楽しいはずさ。

 


ああ、夕焼けに染まる麦畑もいいかもな。

2人で追いかけっこしたりさ。

そうだ。君は、サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』を読んだことがある?

麦畑と聞いて思い出したんだ。

 


原題は『The Catcher in the Rye』というんだけど、訳した人は天才だと思う。

ちょっと内容に触れてもいいかな。

 


主人公がね、大人になった時、ライ麦畑のつかまえ役(The Catcher in the Rye)になりたいというんだ。

広いライ麦畑に子供たちが何千人といてね、で、その畑は崖っぷちのところにあるんだ。

だから、主人公が崖のふちに立って、子供たちが落ちそうになったらつかまえるのさ。

馬鹿げていると思うかい?

 


僕は、これは比喩なんじゃないかと思う。

この話から、子供たちのイノセンスを強く感じたよ。純粋無垢、天真爛漫って感じだね。

 


でも、子供らしくいることを許されない子供だって、きっとたくさんいるはずさ。

周りの大人の態度が子供で、自分が無理に大人にならなきゃいけなかったとかね。

親子の役割が逆転しているんだ。

 


そういう子達も、根は純粋だから、自分の境遇が何かおかしいってことに気づけない。疑いたくないんだ。

親は子供を愛しているもの。世の中の大半はそう思うだろう?

 


今挙げたのは、例えばの話、ほんの一部。

こういった子供を含む、すべての子供たちがね、麦畑の崖から落ちそうになったら。つまり、その命を自然に還そうとしたら。

引き留めてくれる大人が。抱きしめてくれる大人が必要だろう?

主人公はそういう大人になりたいんだ。

素敵だね。

 


後もうひとつ、僕が題名を訳した人を尊敬するのはね。

原題の『The Catcher in the Rye』っていうのは、つまり、主人公の大人の姿のこと。

日本語に訳すと、『ライ麦畑でつかまえて』だったよね。

これ、子供たちのセリフじゃないかな。

原題は三人称視点から主人公を見ていたけど、これは、子供たちから主人公を見た視点。

セリフ仕立てにする事で、自分が物語の一員になったような気がするし、「つかまえて」がひらがななのが、柔らかくて子供らしい感じがするね。

 


…僕の好きな本のひとつさ。子供の頃の気持ちを忘れそうになったとき、読んでみてほしい。きっと君の力になる。

 


長く話しすぎちゃったかな?君と話すのはなんてたのしいんだろう。

惜しいけど、今日はここでお別れしようか。

 

 

 

2回目の手紙。読んでくれてありがとう。

ハープ

1通目。緊張するね。

 

僕の大好きなツリー

 

 

 

こんにちは。

今日から君に手紙を書くよ。

できるだけ毎日。そう、できるだけ。

 


どうしてこんなに回りくどいことをしているのか、気になるみたいだね。

僕は君が好きだよ。それはもうとってもね。

でも、君に対する「好き」が何なのか、未だに自分でもわからない。

感謝?愛情?尊敬?友情?…もしかしたら、それは君にとって束縛かもしれない。

 


ううん、束縛したくないから、こうして回りくどいことをしているんだ。

本当の君にこの気持ちを伝えて、君を困らせてしまうのが嫌なんだ。

だって僕達は親友でしょう?

そこには純粋な友情があるべきなんだ。

 


2年前の冬だったかな、僕らはお互いの秘密を分かちあったね。

べつに綺麗なものじゃなかったけど、この瞬間のために今までの痛みがあったんだ、って思ったよ。

 


でもね、僕は怖かったよ。

僕達が築いたものに、今までは「友情」という名前をつけていたんだけど。

それが「同情」に変わってしまうんじゃないかって。

それはなんだか嫌なんだ。

僕達の関係に名前をつける必要はないかもしれないけどね。…そうして、安心したい自分がいるんだ。

 


ツリー、好きだよ。

 


僕は迷っている。

友達なのか。

恋愛対象なのか。

それとも、これが愛情ってやつだったりしてね。

 


君がもし、いつか大切な人ができてさ。

その人と一生を過ごすと決めたなら、応援する。絶対にだ。

言っただろう?君を縛り付けたくは無いんだよ。

 


ただ、君が好きだと言いたいんだ。

そして、これからも言い続けるよ。

ツリー。

君にいつか届きますように。

 

 

記念すべき初めてのお手紙だ。うまく伝わっているといいんだけど。

ハープ